今日からのご紹介はミニベロのシングルスピード、ピストスタイル、いわゆる固定ギア、Fixed gearなんて呼ばれているジャンルをご紹介。
この記事にエンカウントしてしまった方は、なにかしら特異な自転車をお探しになられているんじゃないかと思います。
強烈にシンプルなトラックバイクに乗りたかったり、人とかぶらない自転車を探していたり、長く使える飽きのこないクロモリのバイクを探した結果、それが現代ではかなり渋い趣味だということに惹かれてしまっていたり。
僕はこの3つ、全てに当てはまって、気づけばバイクをご提案する側になっていました。笑
この記事は全部で3本立てになる予定で、第一回である今回はFLOATってなんなの?や、シングルスピードとミニベロの相性ってどうなん?
なんで全然売ってないの?みたいなところをつらつらと語っていきます。
読んでいけばミニベロピストやミニベロシングルについてより理解が深まると思うし、意外と街中にシングルってあって、その中でもこのミニベロシングルという選択肢は大人の趣味、移動の道具としてしっかり成り立つものだと思えると思います。
そんじゃ、今週のご紹介は…
Engineered Bike Service (EBS) FLOAT 451S 8630R Special

今回紹介させていただくH様のFLOATはかなり偏った変態仕様(褒め言葉)ですが、「ミニベロ」という好きなようにカスタムができる制約の少ないカテゴリーだからこそできるストリートカスタムになっていると思います。
FLOATシリーズは700Cモデルから今回の451ホイールモデルなど多岐に派生しており、その中でも今回は限定版のマテリアルチョイスバージョンを。
といってもこの車種の本格的な紹介はその2からになると思います。笑
FLOAT シリーズとは?
EBSのFLOATは15年前くらいから存在するEBSのフラッグシップ機に与えられていた意匠の名前です。
ツーリングバイクに向いているクロモリフレームの形のひとつに「クロスドシートステー」と呼ばれる、横から見た時の状態から説明すると、シートステーがシートチューブを通り抜けてトップチューブに交差して溶接することで三角を3つに増やし剛性やリアの積載性を上げる工夫から進化していったいわゆる「トリプルトライアングル」というフレームに属するバイクフレームの形です。



FLOATシステムはクロスドと何が違うのか?
横から見ると通常のクロスドシートステー。(そもそもそんなミニベロ自体珍しいのですが)
フロートという名前のとおり、浮かせている部分があります。



クロスドシートステーでは通常、シートチューブの交点も溶接し、かなりガッチリした構成となります。
EBSのFLOATではここをあえて溶接せずに浮かせて、伝えたいパワーはしっかり駆動に伝え、地面からくるネガティブな振動などをこのFLOATシステムで軽減し、リアをグイグイしならせることによって楽しい乗り味を実現しています。
最近カーボンフレームでこの考え方で出したフレームがそこそこ出ていて、時を超えて答え合わせきた!って感じで嬉しかったですね。
FLOATの700とか、451とか、RとかSとかなんなの?
EBSは日々京都で、ハンドメイドで自転車のフレームを製作しているフレームビルダーなのですが、FLOATは長く製作しているだけあって派生種が存在します。
現在ではFLOATを搭載している車種は4車種あり、それぞれ型番が違います。
・FLOAT 700S
・FLOAT 700R
・FLOAT 451S
・FLOAT 451R
上記の4車種が現在のラインナップ。
数字の違い。
700や451はホイール周長の数字のことで、700Cモデル、いわゆるロードバイクと同じ規格のホイール、タイヤサイズを採用している「700」というモデルと、451ホイール、いわゆるスポーツミニベロと同じ規格の20インチミニベロホイールが使用できる「451」というモデルがあります。
SとRの違い。
これはかなりシンプルで、シングルスピード、変速機のない「Single」の頭文字の「S」、
ロード、ギアードでロードやクロスに組むことができる「Road」の頭文字の「R」です。
FLOAT 451Sの基本仕様。
溶接方法 : ラグドフレーム
フレーム素材 : KAISEI 022 ダブルバテッドフルクロモリ(0.9mm-0.6mm-0.9mm)
ヘッドパーツ規格 : ITA 1インチスレッド(カスタムオーダーでアヘッドに変更可能)
ホイール規格 : 20インチ 1-1/8(451)
シートポスト径 : 27.2mm
BB径 : 68mm BSA
エンド規格 : フロント100mm/リア120mm 正爪型トラックエンド/ナット留め推奨
今回ご紹介のFLOAT 451S 8630R Specialの仕様。
溶接方法 : ラグドフレーム
フレーム素材 : KAISEI 8630R ダブルバテッドフルニッケルクロモリ(0.7mm-0.5mm-0.7mm)
ヘッドパーツ規格 : ITA 1インチアヘッド
ホイール規格 : 20インチ 1-1/8(451)
シートポスト径 : 27.2mm
BB径 : 68mm BSA
エンド規格 : フロント100mm/リア120mm 正爪型トラックエンド/ナット留め推奨
パイプマテリアルを変更し軽量化と反応性を向上。
今回製作したフレームはクロモリパイプそのものに変更を加え、より肉薄な軽量レーシングパイプを使用し軽く仕上げたもの。
このKAISEI 8630Rは肉薄にすることにより得られる軽量化と相反し失われる剛性を確保するためにニッケルを添加、方法はかなりデリケートなんですが、溶接時に丁寧に火を入れることで接合部の硬さが増す、という特性を活かし軽くて強い、という特性を併せ持ったパイプです。

硬くて軽い、ということは高反発なフレームとなるので、グッと踏むとパキッと加速するシングルスピードにはかなり向いた乗るのが楽しい素材特性ですね。
ではKAISEI 022はKAISEI 8630Rより劣るのか?
結論から言うと、全くそんなことはありません。
022と比べると8630Rは確かにハイエンドで、高級なレーシングパイプなのですが、用途が全然違います。



KAISEI 022はそれでもかなり肉薄なパイプなのですが、これはツーリンググレードのパイプで、長い距離を乗った時に疲れにくい、優しい乗り味と硬さが魅力です。
KAISEI 8630Rはその硬さが魅力で、グッと踏むと分かりやすく進むのでかなり楽しいです。
ある程度脚力が必要だとか、そんな意見もありますが個人的にはそのようなことを感じたことはなく、現行ではカーボンが一番硬くて、あの感じとはまた違った反応性が楽しめるわりとみんなに愛されてもいい素材だと思いますね。
ただ、価格が高いので(022と比べると色々あって倍近く違います)そのレーシーなスペック、必要なのか?とか膝痛んできたから優しい、長く乗れるやつが欲しい、なんて場合は022が圧倒的おすすめなのです。
シンプルに「8630R」というステッカーが渋くて乗っていたことがある僕としては、「他の誰でもない自分の自転車」を自分だけが愉しめている、ならばオールOKなのです。笑
今はSNSで自分のバイク上げるといいね!って言ってもらえるのでそれも嬉しかったりしますけどね。
ミニベロシングルを組むことのメリット。



ミニベロのシングルスピードといってもいろんな種類があるんですが、なぜか市場にはほとんどない。
ミニベロの「たくさんこがないと走らないのでは?」という(ギア比次第でめっちゃ走ります)そのイメージから、変速がないと売れないのでは、、というメーカーさんの想いもとってもよくわかるし、ある意味正解です。
ですが、EBS KYOTOではミニベロの可能性の先にある、より原始の形に近いシングルの可能性に毎年ワクワクしています。
個人的にシングル乗りだった、ということもあるのですが、やはりシンプルな形は壊れにくいし、できることが少ない故の楽しみ方がたっくさんあります。
ここからは僕のミニベロシングル布教コーナーです。笑
1. 軽くて小さい。

これは言わずもがな。
20インチホイールでコンパクト、それでいて部品点数が少なくてシンプル、軽量。
街乗りをするにあたって、小さいということは何よりのメリットです。
2. 輪行に強い。

上記理由に響く方はこれにもチャレンジしてほしいんですが、小さいので電車に載せてどこかに行ったり、帰ってきたり、車に載せたりするということにかなり強いです。
温泉地の近くまで輪行、ゆったり温泉街をぶらぶらしてもいいし、行けるところまで行って帰る、途中のしんどい山をワープする、走りまくってサウナ行って、ビール飲んで帰りは電車輪行、なんてのもいい。
地元に帰って、知りまくっている道を走ったりするのも楽しいし、夜中の御堂筋を爆走したりするのも楽しいです。笑
3. 壊れにくい。

これはミニベロとは直接関係がなくて、シングルスピードとしてのメリットなんだけど、シングルはギアは前後に一つづつ。
それをシングル用の分厚いチェーンで繋いだだけのかなりシンプルな構造です。
変速性能がつくとチェーンは横にも動くことになるんですが、シングルは縦のみに動くので摩擦も少なく、トラブルが起きにくいのです。
ギアが少ないからメンテも楽。
4. 長く使える。

丈夫なクロモリを使ったフレームでシングル、上記理由から長く使えることに疑いはないと思いますが、その上で「長く使える」ということは、ミニベロでシングル、というものが他の自転車にはない「変わらない」という点があるからです。
日々進化して新型の出るロードバイクやマウンテンバイクはどうしても買い替えが起きますし、(古いことを強調する販売戦略もどうかと思いますが、、)安価なママチャリは3年くらいで買い替える前提だったりするんですが、小さくて、軽くて、丈夫で、壊れにくいこのジャンルは、気づけば乗っている、めちゃくちゃ上質な下駄のような「なんだかんだ、こいつはずっと乗ってるんだよな」という相棒感が生まれるのです。
もし、スーパーカーと軽自動車があれば、街乗りは軽を使いたいな、って感じと似てるかも。
(スーパーカーを所有したことはありません。笑)
ミニベロシングルの製作予定。
EBSは完全ハンドメイドでフレーム製作をしているのですが、少数チームで製作しているので製作の本数は多くありません。。
もちろんロードフレームやグラベルバイクなども製作しているので、ミニベロのシングルは多くても年間で各サイズ合わせて10本くらいかな、と思います。
2023年製作分の受付は終了しましたが、2024年ももちろん製作しますのでいつでもご相談くださいね。
次回の記事ではちゃんとメイン車種ご紹介していきます。笑
それではまた!
フレームはなにがいいのかな、とか、色の相談とか、なんでもご相談ください。
営業日も増えたので、日々お待ちしております!
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