雨降ってる時はとことん、だけど、晴れてる時もとことん。
京都のわかりやすい夏への準備がはじまりました。笑
言ってる間に祇園のおまつり感溢れるあの音が聞こえてくる季節だけど、それより前に梅雨もやってきますね。
EBS KYOTOで多くご相談いただく時期はこの春から梅雨と秋が一番多いです。
納車までの時間って車種からパーツ、仕様までいくらでも変化する要素があるんですが、この時期がもっとも落ち着いてお話をすすめることができるんです。
春前、暖かくなってきて乗りたい!ってなって自転車を楽しく始めるには最も適しているといってもいい季節なんだけど、どこの自転車屋も入荷ラッシュに販売ラッシュで落ち着いて決めることができないし、人気カラー、サイズなんて気を抜けばすぐになくなっちまって妥協が挟まってくることも。
でも、新生活にどうしても必要だし、、で決めちゃってなんだかなー、ってこともあると思うし、逆に、今販売されている自転車ってよっぽどじゃないと粗悪品なんてないからそれでもいけちゃうんだよね。
それでいいこともあるし、心でずっとざわめいていた「自転車かっけー!」みたいな気持ちが燃えてくると買い替えになっちゃったりもする。
どれも間違いじゃないし、最高。
でも、ハンドメイド、国産の自転車って選択があってもそれも最高だと思う。
興味のある人は一度、またがってみたり、自転車の歴史をざっくり調べてみてもいいと思う。
調べると日本の先人やべえ!ってなる。僕もそこに携わりたいですね。
願わくば、みんなに良いバイクが届けられれば。
今週のご紹介は特別製作シリーズより、個人的にめちゃくちゃ推している別注ミニベロシングルスピードシリーズ。
今までは特別製作にて完全別注のみの受付でしたが、今季は受注期間を設けさせていただき、欲しい方に強烈なミニベロを製作させていただこうというものです。
その中で、まだこの企画が企画として走ってなかった時期に一発目に声かけしてくださったH氏のバイクを。
そんじゃ、今週のご紹介は…
Engineered Bike Service(EBS)/Horizontal 451 SS

[SS]はシングルスピードスペシャルの頭文字から取った型番です。
ミニベロのシングルスピードって探しても本当になくって、このページをDigってくださる方も探してきた!って方は多くいらっしゃると思います。
なんでないのか?は現在の自転車製作の主な手法から考えると大量生産せざるを得ず、そこまで「需要がないから」とされていて、まあその言い分もめっちゃわかるんですよね。
でも、色々乗り込んで、最終ミニベロのシングルめっちゃ良い!ってなる人も
初めにこの強烈なスタイリングに惹きつけられてしまった方も
変速べつに使わねー!というシンプルな思いの方も
大人が乗って楽しいシングルスピードならこれです。
っていう上質なやつを製作してきました。
固定ギアで組んでミニベロピストとしても抜群の乗り味を発揮するので、いろんな遊び方、カスタマイズでガンガン使い倒して自分だけの足にしてほしいですね。
Horizontal 451 SSの基本仕様。
パイプマテリアル。
今回採用しているのはEBSで多く採用している国産最後の自転車用クロモリパイプ「KAISEI社」のパイプの中でもかなり軽量で強度も確保しているハイエンドパイプ、「KAISEI 8630R」をフルセットで使用した特別モデルです。
通常版で使用している「KAISEI 022」がすでに上質パイプなんですが、今回は軽量に仕上げることをイメージし、快適快速な街乗りとして、輪行に特化できるミニベロとして、車載などもより楽にできるようにしています。
溶接方法。
これも特別に仕様変更している、というかパイプの素材的に必然なんだけど、薄くて硬いパイプは溶接時の熱を操る難易度が段違いです。
なので、コントロールできる技術と繋ぐ技術が高次元でまとまる「ラグ」と呼ばれる継手を使い、最も伝統的な手法でフレームを製作しています。
ラグフレーム、ラグドフレームなんて呼ばれたりもしているこのフレームは全く大量生産に向いておらず、一本一本かなり時間がかかるので工場生産のバイクなどではまず採用されていない(採用しても価格がえらいことになる)ものですが、だからこそ、その継ぎ手そのものに高級、上質を感じられる、ジャパンクラフトシップ溢れる意匠となったわけですね。
純正パーツ。
今回はフレームの性能をフルに活かすためにヘッドセットを専用設計にしています。
スレッドステム仕様とアヘッドステム仕様を選べるようになっているんですが、スレッドステム仕様のみ、「CHRIS KING」の「Grip nut」を専用設計し、性能を最大限発揮できるようにしています。
アヘッド仕様の場合はスレッド幅に依存しないのでなんでも入れることが可能ですが、やはりCHRIS KINGもしくはPhilwoodなど、ITA規格で使える1インチアヘッドでもおすすめがあります。
フレームカラー。

今回のH様のHorizontal 451 SSではMatt RAW Finishをチョイスいただきました。
溶接の風合いもばっちり見れる人気の仕上げで、艶ありのRAWも選ぶことができます。
もちろん、カラーは多彩にチョイス可能ですし、ラグフレームなのでラグをメッキにして伝統的なスタイリングで組むことも可能です。
僕も今ラグのフレームに乗っていますが、下地にがっちりメッキを入れていてかなり満足度高いです。
フレーム追加工。
特別仕様のさらに特別版、これはもう受付終了していますが、さらにセンタープルブレーキ仕様にしています。
センタープルそのものはカスタムがなくても取り付けが可能ですが、今回はLEAF 451用のアウター受けを流用移設し取り付けています。

もうひとつはボトルケージ台座の増設。
これはめちゃくちゃ実用的!ってわけではないんですが、ミニベロは後ろの三角に構造上余裕があるのでそこをただのデッドスペースとせずにツールボトルなどの工具を入れておくものを取り付けるマウントを増設しています。

これはミニベロでないと実現できないスペースなので、うまく使っていただければ。
リアフラッシャーマウントなんかもできたりするのでご相談くださいね。
Horizontal 451 SSを前から見る。

桜がちらっと見える季節の納車。
納車そのものは最近だったんですが、オーダーそのものはめちゃくちゃお待たせしました。。
(H氏、ほんと感謝です!)
ってことで2021年オーダーの順番通りにバイクチェックする、となるとこのタイミングなのです。笑
走りのミニベロフレームをゆったり街乗りプロムナードに落とし込む。
かなり軽い乗り味に楽だけどスポーティな絶妙な前傾姿勢が最高です。
フロントビューを細部まで紹介。
ハンドルは逆付けプロムナード。


ハンドルバーはNITTO×EBSのコラボハンドル、EBS-10を。
残念ながら長期在庫切れなんですが、NITTOさんにゆったりお願いしています。
このなんでも次の日に届くご時世、これ以上急いてもなにもいいことなさそうだよね。
曲げはほんと絶妙、一本持っておいて欲しいハンドルです。(じゃあはやく再販しろ)
上質アルミパーツに最高ヘッドセット。




日本を代表するNITTOアルミにアメリカを代表するPAULのアルミ。
そこに差し色で入るゴールドのCHRIS KING のヘッドセット。
オールジャパンパーツで製作しよう!という野望もあったりしたけど、日本ということにこだわりすぎてこだわりのない日本パーツ入れても仕方がないので、やっぱり本気で作ってきてるブランドをセレクトしたい。ってことでカスタマイズいただきました。
日本製、って言って、パッケージしてるのは日本だから..なんてブランドたくさんあるし、それは世界共通なんだよね。
しっかりとしたパーツをおすすめさせていただきますのでご安心を。
かといって、ただ高級にならないよう、これええやん!ってなったものは積極的におすすめさせてもらってます!
PAULのブレーキレバーは説明不要の一生物。
ポリッシュパーツの値上げが半端ないけど、長く使うなら導入しておいて損はなし。
値段が上がるから、、なんて動機は不純どころか純粋も純粋です。
買っといてよかった、となること確実の価値上昇パーツです。
足回りもポリッシュでまとめる。



ブレーキ類はオールポリッシュ、オールPAULでトータールコーデ。
今回はセンタープルブレーキを使用。
実はこのバイクはこの「PAULのセンタープルを使いたい」って思いから始まってる。
パーツ起点で始まるカスタムって結構あって、僕もバッシュガードのホワイト使いたいからこれベースで、なんてこともあったし、どうしてもこれが使いたい!って気持ちは大切にして欲しいことの一つです。
センタープルにして制動力がどうだ、とかはPAULの時点で文句なしなんですが、ここではスペックとか、合う、合わないとかのそんなことは超越していて、「やりたいからやる」みたいなロックな視点です。
ライトはバレットライトを専用のステーでフロントフォークセンターに収めています。
最近はKileyの砲弾ライトもあるから選択肢として迷う仕上げ抜群バッテリーライトの始祖。
前後同じ位置に取り付けられて目線的に気持ちいい、とかリアだけKOMA使うとか、なんでもありです。
ホイールはデッドストックのモヒカンリムにWhite Industriesのトラックハブ。
このリムめちゃくちゃ好きなんですが、残念ながら現状再販は確認できていません。
リムは消耗品だからいつかは、、だけど、ミニベロはリムそのものが希少なのである時にゲットしておきたい。
無くなる前にあるだけ全部発注したけど、もうEBS KYOTOにないです。
めっちゃ探してるので、いつかまた、です。
Horizontal 451 SSを横から眺める。

プロムナードバーを逆付けしてセミドロップ風にカスタムした時に見えてくる「ステムが若干見える状態で返ってくる」このなんとも言えないハンドルの感じ大好き。
実際乗りやすさもあるのに前傾ポジション寄りになるので走りもいい感じです。
ビンテージバイクのような空気出るのもいいですね。
サイドビューを細部まで紹介。
フレームワークの特別感。






国産最後の自転車用パイプメーカー、KAISEI社のハイエンドクロモリパイプ、KAISEI 8630R。
正式にはニッケルクロームモリブデン鋼という素材で、クローム(クロ)モリブデン(モリ)にさらに高強度素材を添加した高級パイプ。
この「R」が最高に良い。GT-Rみたいだよね。不敗神話のR。
今回はマットのRAWをチョイス頂いているのでラグの繋ぎがしっかり確認できてハンドメイドの醍醐味尽きる仕上げ。
肉薄チューブで(0.7mm-0.5mm-0.7mm)高強度、しかもミニベロ。
かなり贅沢な一台で乗ってすぐわかる「ヤバさ」が魅力です。
最高の5アームクランクのひとつ、Sugino SG75クランク。

やっぱりこのカットはSuginoというか、いいクランク特有のエッジーな仕上がりです。
ガンガン乗りまくって、Suginoの文字が消えるくらいの時期が一番渋い。笑
今回はクラシカルにマイティのチェーンリングを。
この大きさ、もしかしたらもう絶版かもなので、Hオーナー、大切に、それでいて大胆に使い倒してください。
大径のチェーンリングってあんまり需要がない(僕たちはめっちゃ使いますが)ので、これも仕方がないかな。
今はオーダーでチェーンリングも作れるナイス時代でもあるので、自分だけのギア比、探していきましょう。
手間のかかる子ほど可愛いパターン。


BBはまさかのSuginoスーパーラップ。
完全にレーシングパーツですが、この一番面倒とされるBBの手入れにガンガン手を突っ込んでいくスタイル、大好きです。笑
現代ではシールドベアリング、なんだったらメンテフリー、くらいまできてるのに、分解して洗って、調整して、、の繰り返しが必要な旧型BB。
じゃあなんでこれなのか?となると、バッチバチにセッティング出てると何よりも軽く回るんです。
その代償がメンテ&チューンなのですが、慣れるとすぐにできますし、何より育てるのが楽しいです。
新品のBBでもしっかり仕上げられているんですが、やはり組んで力をかけて扱うとまだまだ玉当たりがこなれてくるのでEBS KYOTOでは初回のセットはそれを見越した硬さのグリスを入れています。
これはちゃんと点検に出していただける前提で、このまま放ったらかしにしたりするのは回転にはそんなによくないんですが、円熟までに時間がかかるのもグッときます。笑
ペダルはMKS、こちらはメンテナンスフリーです。
ペダルの調整はちょっとコツの方向性が違うので、ここは完全に放ったらかし、メーカーにお任せできるネクストシリーズを採用しています。
上質革パーツに便利装備。




ミニベロは構造上自由にできるエリアがそれなりに多くて、こんな尖った仕様でもばっちり便利装備OKです。
実際、構造上の縛りのある部分もあるし、大径車と同じテンションでジオメトリーを引くとえらいことになっちゃうのでノウハウは任せろ!ってところですが、アイデア次第でなんかできるスペース、可能性のあるエリアはたくさんあるので「こんなんしてみたい」とかは言ってみてくださいね!
BROOKSはSwallow、革サドルのなかではかなりスポーツの部類です。
やっぱこのシュッとしたの、合いますね。
フレームパッド、が正式名称かわからんけど、レザーのプロテクターはGROWNから出ているオリジナルパーツ。
僕はこの何の役に立つか?と聞かれれば胸を張って「ドレスアップです」と言えるこのパーツが大好きだ。笑
自転車って必要でないものを引き算していく工程も大切なんですが、明らかにいらないものが主役になり得る、アクセントとアクセントを繋ぐとっても大切な部分になる、ってのが最高に良い。
今回のようにグレー系(RAW)とシルバーベースで進めて、黒で締める場合、これがあると金属やゴム以外の黒成分をトッピングできるのでより目線のつながりが良くなります。
アルミやカーボンの黒はスパルタンに寄りがちなので、こうした優しさも含む本革アイテムはグッときます。
多分、EBSが好きな方はこうしたちょっとしたアイテム、大好きだと思う。
無駄を楽しめる(いや、傷防止なんだけどね。笑)大人は最高ですよね。
Horizontal 451 SSを後ろから楽しむ。

シングルスピード、ミニベロ。
この潔さが最高に良い。
駆動部を色々取っ払いました、変速機いりません、というスタイリング。
それを敢えてミニベロでやる、ってのがまさに大人の遊びというか、実際に乗ってよし、眺めてよし、分解してよしな1/1プラモデルって感じが盆栽みたいな趣味感。
リアビューもしっかり。
間違いなさすぎるWhite Industiresの組み合わせ。

僕はシングルスピードの写真のカットではここが一番好きです。笑
自転車の原初の姿、進行方向である縦方向のみに駆動し、最も効率的に作動するこの一体感。
変速機はもちろん最高。
坂道も安定して登れるようになるし、平地だってビュンビュン行ける。
でも、なぜか惹かれてしまう。そしてその趣味性極まる分野でミニベロ×シングルスピードが出会うのは必然だったのかもしれませんね。
安定感を生み出す名作高精度パーツたち。



リアも同じくPAULのセンタープルブレーキセット、Racer Midiumを使用しています。
チェーンはHKKのベルテックス。
NJS規格でのチェーンではかなり有名どころで、IZUMIのスーパータフネスと双璧を成す、、くらい。
カラーとして落ち着きがあるのも魅力でこうしたモノトーンに近い構成ではグッと映えますね。
タイヤもミニベロ界では定番かつ至高、PanaracerのMinits Lite。
軽くて、高圧で、転がりもいいのにしっかりグリップもする。
Liteは最高グレードなんですが、Toughというグレードもあって、これは好みでOK、交換ごとに楽しめれば。
最高のトラックハブのひとつ、White Industries TRACK。


ボルトナットが真鍮で色合い抜群、とかも最高なんだけど、やはりホワイトのトラックハブは丈夫であること、がなにより。
固定ギアでミニベロピスト化していく時も専用の超高精度コグがあるし、フリー側にも世界最高クラスのフリーギアを自社で出している。
長く使ってると、中のベアリングを交換していくことになるんですが、その時にも超高精度を感じることができます、が、それはまだまだ先のお話。。
Horizontal 451 SSの製作状況。

このバイクは特別製作のため、ご相談の上サイズや詳細をしっかり決めていく旧来の販売方法のみとなっております。
とはいえ、メールで長くやりとりをさせてもらって納車する形もやらせてもらっていますし、予約そのものはオンラインストアで承っていますので遠方の方もご購入、ご相談大歓迎であります。






わりと濃密にお話合いをし、オーナー様に合わせたスタイリングをご提案させていただくため、そのオーナー様のオーダーのご相談が終わるまで受付を中止、製作期間まで一本ずつお話をお伺いする形になり、これも少し旧来感がありますが、特別仕様ゆえご了承いただければと思います。
オーダー受付再開しています。(5/25時点)
このバイクはご相談を対面、メールなども合わせて約3週間ほどヒアリング、構成のお時間にあてています。
8月製作開始予定で、7月頭くらいには合計数出して製作するので、できてもあと一本、、かな、というところです。
ご予約解放時にはオンラインストアのストックを1本入れているので、この機会に特別なハンドメイドミニベロを是非ご検討ください。

関連記事というか、ローンチの時の記事もぜひご覧ください。
個人的にかなり推している、軽くて上質で、大人が何年乗っても良いバイクに仕上げますので是非。
このバイクの製作秘話。
桜咲く、スーパーナイスな時期に納車。
でも、めちゃくちゃお待たせしてしまったバイクで、それはあの渦中真っ只中の2021年。
前述していた「センタープルで組もう」ってところで、このパーツは必須の外せないパーツになったんですが、まさかの超長期入荷未定、でかなりの期間お待たせしてしまいましたが、この際!と言ってくださりバッチバチのセットでシェイクダウン。

ミニベロとシングルスピード、わかる人にしかわかんない偏ったバイクかもしれない。
長く乗るにつれ、このバイクの本物の足感、どんどん育ってくると思います。
なんだかんだ、こいつが一番長く乗ってんだよね、っていつかなるように。
H氏、ありがとうございました!
またお待ちしておりますー!!!!!
Engineered Bike Service/MASN
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